純国産鶏・卵肉兼用種「岡崎おうはん」の開発


独立行政法人 家畜改良センター岡崎牧場


1.経緯

我が国の養鶏産業は、海外に大きく依存し、飼料原料だけでなく多くの種鶏ヒナも輸入されています。こうした種鶏ヒナは、大きく卵用鶏と肉用鶏に分けられており、近年ではそれぞれの用途別に改良が進められてきました。昭和30年代までは、わが国でも卵肉兼用種が数多く飼われていましたが、ヒナの輸入自由化により卵肉兼用種は非常に少なくなってしまいました。その一方で、国内で持続的に再生産ができる国産鶏というものに対して消費者も含めて強いニーズがあり、また、生産者からは、「これまでの卵用鶏とは異なった鶏」という差別化や付加価値化に対するニーズも次第にあちこちで聞こえるようになって来ました。こうした声を背景に、循環型農業に寄与できる純国産鶏・卵肉兼用種「岡崎おうはん」が平成20年に誕生することになりました。

国産鶏とは「我が国の気候風土や食習慣に合うように幾世代にもわたり育種改良された鶏」と定義されています。こうした国産鶏の育種改良は、家畜改良センター、都道府県、民間種鶏場の連携・協力により実施されてきましたが、これら国産鶏による鶏卵肉生産は、現在ではわずかなシェアを占めるに過ぎません(卵:6%程度、肉:4%程度)。

近年、世界的な広がりを見せた高病原性鳥インフルエンザが欧州などで発生したことにより、たびたび種鶏ヒナの輸入が途絶したことから、国内では生産者のみならず、流通、消費の関係者からも、「国産鶏」が注目され、「種から国産」であることの重要性に大きな関心が寄せられています。



2.「岡崎おうはん」の作出

(独)家畜改良センター岡崎牧場は、過去83年に亘り原種鶏の育種改良を継続して行ってきましたが、その一方で県や民間等への改良用基礎系統の配布も行ってきました。「岡崎おうはん」は、こうした岡崎牧場が保有する原種鶏を用いて作出した二元交雑種です。父系統は横斑プリマスロック、母系統はロードアイランドレッドで、これらの品種は、何世代にも亘り育種的に先祖が遡れる基礎系統で、いずれも国産銘柄鶏の定義にある地鶏の在来種に該当します。どちらの系統も全国各地で開発されている実用鶏や、特産鶏の基礎系統として用いられており、非常に特長のある優良系統で、「岡崎おうはん」はこうした性格の全く異なる系統のヘテローシス効果で誕生した優良交雑種です。



3.「岡崎おうはん」の特長

「岡崎おうはん」は、数々の特長を持っています。

(1)剛健で環境能力のある純国産鶏で美しい横斑が特長。差別化が容易。

(2)卵も肉もおいしい卵肉兼用種としての利用を狙っており、国内では希少価値。

(3)国産鶏の特徴でもある育種改良過程を含む生産履歴情報を提供可能。透明性は非常に高い。

(4)親鳥も雄ビナも全てジューシーな鶏肉として利用できるため、限られた国内資源の有効活用に有用。



4.高い生産性と品質の良さ

「岡崎おうはん」は高い生産性とその品質の良さも大変魅力的な鶏です。

(1)卵用鶏を超える高い産卵性能。

(2)MS〜Lサイズ(52g以上70g未満)の割合はほぼ100%(LLはほとんど出ない)。

(3)卵質は良好(大きな卵黄。卵黄卵重比28%)。

(4)うまみのある肉質は定評。体重は平均2.5kg(卵用鶏と比較し大型)。



5.今後の展開

現在、平成20年10月に発足した「岡崎おうはん」振興協議会を中心に活動を展開しています。協議会では、消費者流通販売、成鶏処理、生産、種鶏孵卵者が入って、販売促進策や認定制度の検討や基準を設ける取り組みを行なっています。

岡崎牧場では、さらに多くの方々にこの鳥の良さを知っていただくため、広報活動に努めているところですが、今後、産肉性能の調査など様々な調査を行うとともに、消費者や生産者のニーズを合った育種改良を進め、更なる振興に努めたいと考えております。

【付属資料】
国産の肉用鶏種「はりま」、「たつの」、「地域の地鶏・銘柄鶏」等の普及について
純国産鶏・卵肉兼用種「岡崎おうはん」の開発